第17章 願い
『………ど…う……して……?』
呟くようにそう言うと
チサトは震える指で口元をおさえた
『………どうして……そんなキスするの……』
どんな時も
言葉で伝える以上の愛情を感じさせてくれた
カヲルのキス
タケルのキスは
カヲルがくれたのと同じものだった
戸惑うチサトの頬の上に
一粒の滴が溢れ落ち
こめかみの方へ流れていくのを感じた
『………っ…』
目隠しを外し
身体を起こすと
目の前に悲しげなタケルの顔があった
『…………タケル…さん……』
「………ゴメン…チサト………もっと…ちゃんとやるから…」
その時
チサトは初めて
彼の想いに気が付いた
タケルの過去について
以前カヲルから聞かされた事があった
カヲルは
タケルが何故あんな風になってしまったのか
理解しなくてもいいから
ただ知っておいて欲しいと言っていた
歪んだ愛情しか知らずに生きてきたタケルは
気持ちの伝え方を知らないだけで
タケルはタケルなりに
ずっと
チサトの事を想ってくれていたのだった