第17章 願い
明かりの消えた薄暗い部屋で
チサトはタケルに
バッグに入っていた薄いスカーフを差し出した
『…………これを……使ってください……』
タケルは何も言わずにスカーフを受け取ると
チサトの背後に立ち
彼女の目を覆った
「……」
チサトは躊躇うタケルの腕を取り
自分の肩へ回させた
『…………お願い……』
「……」
タケルが後ろから抱きしめると
チサトは少しだけ身体を強張らせた
ゆっくりと深呼吸を繰り返すと
次第に肩の力が抜けてくる
チサトは
回された腕にそっと触れた
『…………カヲル…さん……』
チサトは後ろを向くと
タケルの手を自分の頬にあて
自らも両手でタケルの頬を包んだ
『……』
閉じた瞼の裏に
カヲルの笑顔を想いながら
チサトは唇を近づけ
そっとキスをした
唇に触れる優しい感触
それは
カヲルとのキスそのものだった
『……………会いたかった……』
触れるほどに
彼の存在が強く感じられるようで
チサトは夢中で
カヲルを求めた
角度を変えて
何度も口付けるうちに
啄むようなキスは
次第に深くなっていく
『………っ……………カヲル……さ……』
くぐもった声で名前を呼び
背中に腕を回して縋りつくと
それに応えるように
身体が抱き上げられる
ベッドに横たえられたチサトが
更に深い口付けを強請ると
滑らかな舌が
まるで別の生き物のように蠢いて
口腔を犯していく
『……………ん…………んんっ……………ハァ……ハァ…………カヲル…さん…………カヲルさん…っ…』
確かめるように
何度も名前を呼んでいたチサトが
不意に
動きを止めた