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bird cage 【R18】

第15章 storm





咄嗟には言葉の意味が分からなかったが
何か嫌なモノが喉に詰まったような感じがした


「………ぇ……?」


掠れた声で聞き直したタケルに
チサトは続けた


『……カヲルさん……まだ何も連絡をくれないんです…』

「………………チサト……?」

『………ぁ……タケルさんの方には…電話とかありませんでしたか…?………もしあったら…』

「……チサト…………………兄さんは……もう居ない…………死んだんだ……」

『………?………………何…言ってるんですかタケルさん…………カヲルさんは……仕事で海外に…』

「…カヲルは死んだ!……………死んだんだよ……」


タケルはそう言って
未だに実感を持てないでいる自分自身にも
強く強く言い聞かせた


『…………酷い…………どうして……そんな事言うの……』


震える声に顔を上げると
怒りをたたえたチサトの瞳があった


『……帰ってください…』

「………チサト……どうしたんだ………しっかりしろ!………兄さんはもう…」

『うるさい!帰って!…早く家から出てって!』


あまりの剣幕にタケルが部屋の外に出ると
チサトは乱暴にドアを閉め
それきりなんの応答もしなくなってしまった



タケルは仕方なくその場を離れ、エレベーターで階下に降りると
マンションの前に待たせていたタクシーに乗り込み
運転手に自らが入院している病院の名前を告げた






タケルの不安を煽るように

夏の終わりを告げる雨が

しきりに窓ガラスを叩いていく





息苦しさを覚えて

顔を上げた時


灰色の空に閃光が走り

雷鳴が轟いた









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