第15章 storm
病院に戻ったタケルはリハビリに励み
それから2週間ほどで退院することができた
しばらくの間はまだ片側だけ松葉杖を使うようだったが
少しずつでもいいからなるべく早く仕事に復帰したいと告げると
宮澤はとても喜んでくれた
タケルは
あれから何度もチサトに連絡を取ろうとしたけれど
彼女は一度も電話に出なかった
2人が出演したドラマは
予定通りこの秋から放送をスタートした
不幸な事故に見舞われたことが世間的な注目度を更に高める結果となり
皮肉にも視聴率は毎回予想以上の数字を残していた
チサトが休養を取っているため
ドラマに関するメディアの対応は全てタケルがひとりでこなした
実の兄を亡くしたばかりということで
ある程度の配慮はあったが
それでも
番宣のために雑誌やテレビに顔を出し
事故のことや怪我のことを語らなければならない仕事が続いた
無理にでも表舞台に復帰し
他の人達との接触を敢えて持ち続けたタケルは
カヲルがもうこの世から居なくなってしまったという現実を繰り返し突き付けられていくうちに
次第に受け入れることができるようになっていった
脚の怪我がほぼ良くなり
包帯も取れる頃には
新しい事務所での仕事も徐々に増えて
タケルの周りは多少なりとも落ち着いてきた
残る気掛かりは
ただ
チサトのことだけだった