第15章 storm
駐車場まで来た時
停まっていた一台の車から
喪服姿の男が降りてきた
業界最大手の芸能事務所社長・宮澤だった
「…降ってきそうだ……病院まで送ってくよ…」
「……ありがとうございます………でも……ちょっと寄るところがあるので…タクシーで戻ります…」
「……そうか……車椅子じゃなくて大丈夫だったのか?………特別に外出許可してもらったってのに…あまり無理すると入院が長引くぞ…」
「………気を付けます……………宮澤社長………この度は…色々と力になってくださって……本当に助かりました…」
「…いいんだ……こんな事になるずっと前から……オマエをくれぐれもよろしくと…カヲルのヤツに頼み込まれてたからな………まぁ…子役の頃からの長い付き合いだ………これからも遠慮なく頼ってくれ…」
「………ありがとうございます…」
「…………タケル………この間話した移籍の件……考えてくれたか?」
「……………はい……………兄と社長との間でそんな話が進んでいたなんて…全然知らなかったので驚きましたが………それが兄の希望だったのなら…受け入れたいと思います…………どうぞ…よろしくお願いします…」
「……そうか……良かった…」
遠くから雷鳴が聞こえ
パラパラと大粒の雨が降り始めた
宮澤は手を上げ
霊園の乗降場に待機していたタクシーを近くに呼ぶと
後部座席にタケルを座らせた
「…契約の事なんかはまた今度話そう…………それよりもまずは怪我を治すことだな…………リハビリ…頑張れよ…」
「……はい…」
宮澤は力強く頷くと
タクシーのドアを閉め
自分の車へと戻って行った
タケルは
黒い上着のポケットから先程もらったメモを取り出すと
そこに書いてある住所を運転手に告げた