第2章 play 1 ※
腕の力が抜け
チサトの手からスマホが滑り落ちた
しばらくの間茫然と立ち尽くしていたチサトは
最後の望みを込めてカヲルを見上げた
けれど
冷たく整ったその顔からは何の感情も読み取れなかった
『……こんなの……許される事じゃない…』
チサトはそう言うと
重い足取りでタケルの待つ部屋へ入っていった
柔らかな間接照明に包まれた生活感の無いその部屋は
ゲスト用のベッドルームらしかった
大きなベッドに腰掛けていたタケルが立ち上がり
微笑みながら近付いてくる
『……タケルさん………やめてください…こんな事…』
タケルは何も聞こえていないかのように
チサトの手首を掴むとベッドの側まで引いていく
「…いつまでそんな顔してるの…?……楽しもうよ…」
チサトの頬に手を添え
唇を近づける
『……っ…』
チサトが顔をそらしてキスを拒むと
タケルの微笑みが消えた
「……」
タケルはチサトの両肩に手を置くと
ベッドの方へつき飛ばした
仰向けに倒れた身体の上に、気怠そうに覆い被さり
首筋に顔を埋める
『……いやっ…』
チサトは逃れようと身をよじり
足をバタつかせた
その時
ドアの方に気配を感じた
チサトは助けを求めるようにカヲルに視線を送った
けれど
彼は目を合わせずにドアを閉めて行ってしまった
『……』
絶望を感じたチサトは
抵抗する事を諦め、強く目を閉じた