第2章 play 1 ※
チサトの返事を聞いて
マネージャーの声が低くなった
「……自分から仕事を降りるって……アナタ…意味分かって言ってるの?」
『……ぇ…』
「…この仕事を降りた瞬間に…アナタのアイドル人生はおしまいよ……芸能界を干されるだけじゃない…莫大な違約金が発生するわ……"三神タケルの相手役"だからこそもらえた他の番組出演や雑誌、新曲もCMも全部パー………アナタは数億の借金を抱えて路頭に迷うわ…」
『……そんな…』
「…まぁ…アナタがどうなろうと自業自得よ……でも…この世界は個人の責任だけじゃ済まされない………所属タレントがいい加減な事をすると事務所全体に迷惑がかかるの……今後…他のタレント達にも仕事を回して貰えなくなる…………アナタ……ウチの事務所潰す気?…」
『……』
「…………分かったら……冗談でもそんなこと二度と口にしないで頂戴…」
マネージャーはそう言うと電話を切ってしまった
『……』
マネージャーの言葉が信じられなかったチサトは
社長にも電話をかけてみた
けれど
何回コールしても社長は出なかった
何度かかけ直していると
「おかけになった電話は 電波の届かない場所にあるか 電源が入っていないためかかりません」
というアナウンスに切り替わってしまった
そこでチサトはようやく全てを察した
自分は
事務所に売られたのだ
この事は
社長も
マネージャーも
全て了解済みなのだと
この先も今の生活を続けていく為には
ここで"三神タケル"に逆らう事は許されないという残酷な現実を
チサトは突きつけられていた