第3章 白昼夢
これは迷子じゃない。絶対に道に迷ったわけじゃない。これは……
『え、とっ…スマホスマホ……』
ポケットからスマホを取り出して、助けを求めようと電話の連絡先を開こうとする。
『け、圏外…?えぇ……』
まあ、そりゃそうか。こんな山奥だもの。WiFi繋がってるわけないか…。
私は肩を落とした。
絶望だ……。
『あ……』
そういえば伊地知さんに30分しても、戻らなかったら様子見に来てと頼んだ。
『……伊地知さん、どこにいるんだろう』
きっと30分以上は経った。伊地知さんの姿を見てないけど、伊地知さんは様子を見に来てくれたかな。
ここの学校あんまり広くないから、すれ違ってもすぐ会えそう。
でも玄関がないから入れないのかもしれない。
このままずっと1人でここから出られないと考えると、ものすごく怖い。
これは呪霊の仕業なの?
でもここは呪霊の気配ない。そしたら、もう神隠し以外ありえないんじゃ…
誰か助けに来て欲しい。
ずっとここにいるのは嫌だ。
『…ぅうっ、ぐすっ…』
考えると、不安になって私は泣き始めた。
恵くん、悠仁くん、野薔薇ちゃん……他に2年生のみんな、それに先生たちの顔が頭に浮かんだ。
夢なら早く醒めて欲しい。
そう強く願う。