第1章 ぱちんとはじけて
静かな夜だった
真っ暗な中誰の気配もなく、月だけが私たちを照らす
そんな静かすぎる夜だった
「どうして?」
ポツリと口から出たその言葉はこんな静かな月夜には似合わない異質な存在に向けてだった
むき出しの牙、燃え盛る炎、ドラゴンの羽、鋭い爪
見たこともない恐ろしい生き物が私を威嚇している
静かな月夜に浮かび上がる炎はゆらゆらと揺れてこの世のものとは思えないほどで
私はただ、その生き物を見ていることしかできなかった
「ガアアアアアアア!!!!!」
大きな咆哮と共にその生き物はこちらへ飛んで来る
逃げろ、と頭の中では警鐘が鳴っているにも関わらず私は逃げることはできなかった
悲しみに絶望、自分の不甲斐なさに心が打ちひしがれてしまったからだ。なぜなら私はその生物が誰だか
知っているから