第8章 秘匿死刑
五条先生は虎杖くんに考える暇を与えた。
心の整理をする時間を。
私は五条先生に連れられて、近くの大きな病院に来ていた。
病院はその性質上、負の感情が多い。
足を踏み入れた瞬間から、チクチクと身体に呪いが刺さったけど。
スタスタと私の前を歩く五条先生に、そんなことは伝えられなかった。
そうして、しばらく歩いて。
五条先生が立ち止まった部屋のネームプレートには【伏黒恵】の文字が記されていた。
「恵、元気ー? 生きてるー?」
五条先生が笑いを含んだ声音で部屋の戸を開ける。
ガラ、と開いた戸の向こう側には頭に包帯を巻いた伏黒くんがいた。
「伏黒くん、大丈……」
シャリリリリリリリ!!!!
(えー……)
大丈夫? と問いかけようとした私の声は、盛大に鳴り響いた連写音にかき消された。
まさかと思いながら、横を見たら五条先生がスマホで伏黒くんの痛々しい姿を写真に収めていた。
「うわぁ、治療されると更にヤられた感強くなるね。これも2年の皆に見せよーっと。ビフォーアフター的な」
「マジでこの人何しに来たんだろう」
伏黒くんが遠い目をして呟いた。
まったく同感だ。
「お見舞いに決まってるだろ。恵の大好きな皆実を連れてきたよ」
「……っ、別に大好きってわけじゃ」
伏黒くんが顔を真っ赤にしている。
前に私の下着姿見た時以来の噴火具合。
気持ちはわかるけど、五条先生の冗談に怒っても、五条先生喜ぶだけなんだけどね。
「分かってるよ、伏黒くん」
「いや、その……。……っ、嫌いなわけじゃないからな。そこは勘違いするなよ」
私が落ち込まないように、そんな言葉を付け加えてくれて。
伏黒くんはやっぱり優しい。
五条先生はそんな伏黒くんに爆笑かましてて、やっぱり性格悪いと思う。