第8章 秘匿死刑
「頑張ったんだよ。死刑は死刑でも執行猶予がついた」
私の時もそうだったけど。
五条先生はただの高校教師の割に、かなりの権力を持っているように思う。
学長ならまだしも、ただの1年生の担任の先生なのに。
強いから? 呪術師の世界は強さで権力図が決まってたりするのかな。
「執行猶予……今すぐじゃねえってことか」
「そ。ちなみにここにいる皆実も執行猶予つきの秘匿死刑者」
五条先生が両手をくるりと回して私のことを指差す。
そんな愉快なジェスチャーで伝える話じゃないと思うけど。
「あ。あんた、さっきのかわいい子。……皆実、だったっけ」
「綾瀬皆実です。……えっと、よろしく?」
「俺、虎杖悠仁。よろしくなー」
ペコリと頭を下げる私と、ニカッと笑った虎杖くん。
私たちの様子を見て、五条先生がクスクスと笑った。
「死刑囚同士で自己紹介とか滅多にないよね」
五条先生は呟いて、ズボンのポケットを探り始める。
「とりあえず、一から説明するね」
そうして五条先生はポケットからグロテスクな指を取り出した。
(よくそんなの持ち歩けるなぁ。……まあそれを食べた人がそこにいるんだけど)
見てるだけでもおぞましいというか、凶々しいというか。
「全部で20本。ウチではその内の6本を保有してる」
(そのグロいのが20本……)
「20本……? ああ手足で」
「いや宿儺は腕が4本あるんだ」
「腕が4本!?」
反応した私に五条先生が頷いた。
「そう、4本。呪いっぽいでしょ?」
「呪いっぽいっていうか……」
「そんな得体の知れないヤツに口説かれてたんだよ、皆実は」
また空気がピリッと凍りついた。
数分前と同じ重たい空気感。
(これはたぶん……尾を引くよね)
でも今その話を掘り返すわけにもいかない。
私はキュッと口を閉じた。
そんな私の反応を五条先生は一瞥すると、持っていた指をポイっと投げて……爆発させた。