第8章 秘匿死刑
「おはよう」
五条先生が虎杖くんに声をかける。
おそらく、これは虎杖くん本人。
それを五条先生も分かってる。けど五条先生は分かってて、あえて尋ねた。
「今の君はどっちなのかな?」
虎杖くんはまだボーッとしてるみたいだったけど。
五条先生の自己紹介を聞いて、意識を覚醒させたみたいだ。
「先輩……! 伏黒は!?」
(自分も怪我してるのに、まず他人の心配するんだ)
しかも伏黒くんは、たぶん今回会ったばかりのはず。
それなのに真っ先に心配して。
不安になるくらい人が良いなって。
私と同じことを思ったのか、それとも全く違う意図なのか。
五条先生は虎杖くんに声をかけた。
「他人の心配してる場合じゃないよ、虎杖悠仁」
ああ、この感じは覚えがある。
「君の秘匿死刑が決定した」
同じ言葉を告げられたあの時のことが、もう随分前のことのように思えた。