第7章 両面宿儺
「皆実連れて跳べないから、僕は先に行くけど。皆実は階段上っておいで。3階の窓から渡り廊下の屋根に移れるから」
五条先生は的確な指示だけ残していなくなった。
無下限呪術って、なんでもできるんだなぁ。
……五条先生が応用しまくってるだけな気もするけど。
そんなことを思いながら私は杉沢第三高校の校舎に入る。
学校、の割に……この高校は呪いの声が少ない気がした。
「結構いい学校なのかな」
呟いて、階段を小走りで駆け上る。
言われた通り、3階……少し走ると、五条先生の言っていた渡り廊下が見えてくる。
(伏黒くん……めっちゃボロボロじゃん。大丈夫かな? 五条先生が写真撮ってるのは気のせい?)
スマホを片手に笑ってる五条先生と、不機嫌な伏黒くんが目に映る。いつもの光景に少し安心したけど。
(あの男子、なんで裸……)
五条先生と伏黒くんの前に、上半身裸の男子が立っている。
(てゆーか、あれ? そういえば……)
さっきの濃い呪力の気配がいつのまにか消えている。
(どういうこと……?)
不可思議に思っていると、五条先生が私に気がついてそちら側に繋がる窓を壊した。壊していいの?
(壊したの五条先生だし、いっか)
私は窓に乗り上げて、ひょいと飛び降りる。
私が現れると、伏黒くんが目を丸くした。
「綾瀬!」
「伏黒くん、大丈夫?」
「俺は大丈夫だけど」
「全然大丈夫そうじゃないから聞いてるんじゃーん、って皆実が」
私と伏黒くんが同時にギロリと五条先生を睨む。
すると五条先生は「怖ッ!」って愉快そうに笑った。
「で、見つかった?」
五条先生は本題に入る。
まず聞きたいのは、特級呪物のこと。
おそらくこの惨事は特級呪物が関係している。
でも伏黒くんはなぜか黙っていて。
その代わりに上半身裸の謎の男子が「あのー」と声を上げた。
「ごめん。俺それ食べちゃった」
沈黙が、流れた。