第7章 両面宿儺
「……それにしては、気配が大きすぎる。……様子がおかしいな」
五条先生は顎に手を置いて考えるような素振りを見せる。
私の身体に流れてきてないってことは、これはおそらく非呪術師の漏出した呪いではない。
呪術師か、あるいは呪霊か。
その中を廻ってる呪力の気配。
伏黒くんはこんな濃い気配を放たない。
とすれば、これは……。
「皆実」
五条先生が私の肩に触れ、そして顎を捉えた。
「……ん、ぅっ」
五条先生の舌がぬるりと忍び込んできて、私の舌と絡み合う。
触れ合った粘膜越しにどんどん呪力が抜かれていく。
同時に口の中に甘い味が広がった。
(こんなところでしないって、言ったのに……!)
私がドンドンと五条先生の胸を叩くと、五条先生がわざとらしくリップ音を鳴らして私の唇から自分の唇を離した。
私と五条先生を繋ぐ、銀色の糸をぺろりと舐めて、口角を上げる。
「やっぱり食べてよ、ずんだソフト。……美味しいから」
「今そんなことしてる場合じゃ……」
「たぶん、ヤバいのがいる」
五条先生は私の言葉を遮って、静かな低い声で言った。
おそらく、この気配の主のこと。
万が一の時のために。
私の身体を気遣って、五条先生は私から予め呪力を抜いたんだ。
「アハハッ、……キスの後なんだからもう少し色っぽい顔しなよ」
五条先生は笑って、私の頭を撫でた。
「大丈夫。僕の敵じゃないから」
これほど心強い言葉は、この世のどこにも存在しないんじゃないかって思った。