第7章 両面宿儺
食べた?
特級呪物を?
たしか、腐った指じゃなかった?
え、食べた?
「「マジ?」」
私と五条先生の声が重なる。
その疑問に対して伏黒くんは冷静に「マジ」と答えた。
でもたしかに、さっき校門前で感じた呪いの気配がこの男子から微かに漂ってる。
五条先生は「んー?」と唸りながら、その男子に近づいた。
「ははっ、本当だ。混じってるよ、うける」
何が見えたんだろう。
そもそも何も見えない格好してるのに。
上半身裸の男子も「見えてんの?」て不思議そうに呟いてる。
「身体に異常は?」
「特に……」
「宿儺と代われるかい?」
まさか、この人。
わざわざ、さっきの気配の主を呼び出すつもりじゃ……。
「じゃあ10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」
いやいやいやいや、自分でヤバいのって言ってなかったっけ?
そりゃ、五条先生の敵じゃないかもだけど。
そばにいるのが怪我してる伏黒くんと、雑魚の私って分かってるかな。
「でも……」
「五条先生、さすがにまずいですよ。それは」
躊躇する上半身裸の男子に合わせて、私も反対してみたけど。
「大丈夫。僕、最強だから」
全然意味なかった。
いや、先生は最強かもしれないけど。
「恵、これ持ってて。皆実は恵のそばに」
五条先生は私を背に隠し、そして伏黒くんに喜久福の入った袋を投げた。
あ、絶対観光してきたってバレた。
「伏黒くん、マジでごめんなさい」
「あ、言っとくけどそれ、土産じゃない。僕と皆実が帰りの新幹線で食べるんだ」
五条先生が伏黒くんにしょうもない訂正をした瞬間。
さっきの呪いの気配が戻ってきた。
「五条先生!」
「後ろ! 綾瀬、もっとこっちに来い!」
私の声と伏黒くんの声が重なる。
五条先生の頭上に上半身裸の男子。
(顔に模様……っ! これが、両面宿儺!)