第1章 プロローグ
改めてそう告げられる。
もう腹は括ったからか、それほど重く響かなかった。
「理由は『高校に呪霊を召喚し、自らの呪力を供給することで強化。特級呪霊を使役し、校内生徒及び教師を呪殺した呪詛師の可能性がある』から」
起こった事実はその通りで、何も否定できない。
でも五条先生の話はそこで終わらなかった。
「でもね、可能性で人を殺すことを僕は良しとしない。もしそれで君が無実なら、僕たちの方こそ呪詛師だ」
五条先生の指先が私の顎に触れる。
くいっと上を向かされて、五条先生の顔と向き合う。
でも黒布に阻まれて五条先生と目が合ってる気はしなかった。
おかげで無様な私の顔は見ずに済んだ。
「だから君が何者か、それが判明するまでは僕の監視下で生きてもらう」
どうしてこの人は、こんな私を助けるんだろう。
どう考えたって、殺したほうがいいはずなのに。
「やめたほうがいいですよ。……私、呪われてるんです」
「知ってる」
「五条先生に迷惑かかりますから」
「うん。でも言ったでしょ、僕最強だって」
あの人以外、私を守ってくれる人はいないはずなのに。
呪われた私は誰かを傷つけることしかできないのに。
「もし君が呪霊を呼んでも、僕なら死なない。何が起きたとしても、僕が君を守ってあげる」
『皆実。……君は、私が守るよ』
どうして、五条先生はあの人と同じことを口にするんだろう。
どうして、私はその言葉に逆らうことをしないんだろう。
「皆実。僕が僕の世界で、君を心の底から笑わせる」
腕の縛りが解ける。
五条先生の指が私の顎を離れ、頬へと滑った。
「もしそれができなかったら僕が君を殺してあげるから」
五条先生の唇が、私の唇と重なった。
私の中を流れる呪力がどんどん五条先生に流れていく。
身体がどんどん軽くなって、身体を刺す痛みも消えて。
「……ごめんね。でも、初めてじゃないだろ?」
また意識が遠のいた。