第7章 両面宿儺
伏黒くんが帰ってきた時に、少しは成長していたいから。
練習がんばろーって意気込んでたのに。
「あ、その喜久福2箱くださーい」
なんで私は五条先生と宮城県に来てるんだろう。
そしてどうして五条先生はのんきにお土産なんか買ってるんだろう。
「皆実も買う? 美味しいよ、喜久福。オススメはずんだ生クリーム味」
「同じものお土産に買ってどうするんですか」
「お土産?」
「え?」
例の如く話が噛み合わない。
でも今回は五条先生が話の軸を合わせてくれた。珍しい。
「これはお土産じゃないよ。僕が帰りの新幹線で食べる分。2箱買ったから皆実も食べようね」
行きの新幹線では牛タン弁当を一緒に食べた。
これもう、完全に観光じゃない?
「……あの、特級呪物探しにきたんじゃないんですか?」
「名目はね。やっぱり特級呪物が行方不明っていうのは上的に問題みたいで」
「どこでも問題ですよ」
「やーん、皆実ちゃん、つめたーい」
白々しい物言いに目が半目になってしまう。
そんな私の顔を見て、やっぱり五条先生は笑った。
「呪物の残穢を追えば、だいたい場所は分かる。とはいえ、特級呪物ってだけあって気配が大きいから、恵は的絞るのに苦労してるみたいだけど」
「五条先生は……もう分かってるんですか?」
「まぁ、だいたいね」
五条先生はアイマスクの下から片目だけ覗かせた。