第6章 呪いの享受③
死ななきゃいけない私を。
醜い私を。
呪われた私を抱きしめて。
「『君が死ぬ必要はない』って。『君は、私が守るよ』って」
本当は毎日あの人の隣にいたかった。
でも都会に行ったら、私の身体に負担がかかるからって。
その人は私を祖父母のいる田舎に置いていった。
でもその人は、約束通り、私のことをずっと守ってくれた。
忘れずに、私に会いに来てくれた。
「ファーストキスなんて、そんな綺麗なものじゃなかったですよ」
呪いに身体を刺されて泣いてる私を、ただひたすらあやすみたいに。
いつだって、優しかった。
その優しさに甘えて、私はその人の心の傷には気づけなかったけど。
あの人が誰かを呪い殺した日も。
私と同じくらいの小さな女の子たちを助けたあの日も。
「ずっと……ずっと、優しくて」
身体の痛みに耐えられるような歳になっても。
あの人は私に会いにきてくれた。
私のことを忘れないでいてくれた。
あの人といる時だけは、
ずっと、幸せだった。
私は一度だって、忘れたことはないの。
「でも、いなくなっちゃった」
あの人がいなくなった、あの日のことを。
私は何度でも思い出す。
「会うたび触れてたから、私の中にはその人の呪力の痕跡があって」
去年のクリスマスイブ。
あの日の朝も、私はその人と一緒にいた。
『今日が終わったら、迎えに行くよ』
約束した。指切りをした。
「幸せな世界で心の底から笑い合おうって」
でもその日、身体の中にあったその人の呪力が全部消えちゃった。
そんなのありえるわけないって、何度も探して。
朝になれば、きっと迎えに来てくれるから、大丈夫だって。
「でも、その人は……現れませんでした」