第6章 呪いの享受③
「私が5歳の時、呪いが身体の中にいっぱいで毎日毎日身体が痛くて、身体の中でうるさく呪いの声が鳴り響いて」
でも身体はどこも悪くなくて。
静かな場所でも「うるさいうるさい」って泣く私を両親は不気味がって。
「そんなときに、私の身体を流れてた呪いが教えてくれたんです。《少しだけ血を流してみたら、楽になれるよ》って」
それは嘘ではなく真実で。
でも、流した血をどうしたらいいかなんて、当然呪いは教えてくれるわけなくて。
「手のひらをナイフで切ってみたら、思ってたよりたくさん血が出て。手のひらの傷は痛いはずなのに、なぜか身体の痛みがなくなって」
本当だ、呪いの言う通りだって。
私の中に宿る呪いはいい呪いなんだって。
そう思った瞬間。
《イイニオイ、ソレチョウダイ》
私の血に寄せられたどこかの呪霊が現れた。
「その呪霊が何級だったのか、知らないけど。私の血を吸った瞬間、みるみる大きくなって」
みんな、殺した。
お母さんも、お父さんも。
ご近所の人も、学校の友達も、みんな。
「お母さんは死ぬ直前まで、『あんたのせい、あんたなんか産まなきゃ幸せだった』って泣いてたんです」
笑っちゃうくらい、他人事。
それくらい両親との思い出は酷いものばかり。
それを知ってるから、祖父母の私の待遇も腫れ物扱いだった。
「呪いが全部壊して。私だけが生き残って」
血だらけの街に呪霊と2人きり。
何もなくなったその街で、私は……私だけは呪いに殺されることもなくて。
みんなを殺しちゃった私は死ななきゃいけないって。
そう思った時。
「その人が助けにきてくれたんです」