第6章 呪いの享受③
身体が、軽い。
私の身体を刺していた呪いは、全部五条先生に流れていった。
「うん。……そう、ありがとう」
視線を彷徨わせると、ベッドの縁に腰掛けて五条先生が誰かと電話してた。
私が起きたことに気がついて、五条先生はひらひらと私に手を振った。
「分かった。後で僕もそっちに向かう。……ん、皆実?」
電話の向こう側の人が、私のことを尋ねたみたい。
私が身体を起こすと、五条先生がスマホをそのまま私の耳に当てた。
「恵から」
その言葉とともに、耳元から伏黒くんの声がした。
『……大丈夫か?』
「うん。私は……。伏黒くんにも、迷惑かけてごめんなさい」
もしかしたら、伏黒くんを殺していたかもしれない。
ごめんで済まされることではないのだけど。
『俺のことは気にしなくていいから』
「……ありがとう」
『それと…… 綾瀬」
伏黒くんは言葉を続けた。
たぶんこっちが本題なんだろう。
『あの子ども、綾瀬が呪いを吸ってなかったら今頃死んでたって。……家入さんが言ってた』
こんなときまで、伏黒くんは私のことを気遣ってくれてる。
呪われてる私は、それと同じだけ恵まれてる。
『何を言われたとしても、オマエはあの子を助けてて。だから、その…… 綾瀬は、悪くないから』
「……うん」
『言いたかったのは、それだけ。……じゃあ、また学校で』
私は五条先生にスマホを返す。
しばらく伏黒くんとお話をして、五条先生は通話を切った。