第4章 呪いの享受
窮屈な呪いが新たな行き場を見つけて、流れていく。
でもその行き先は……伏黒くんじゃない。
「……んっ、んんっ。ふ、あ」
口の中を舌が這う。
伏黒くんの頬に触れていた手は、大きな手に絡め取られていた。
「五条、先生……」
私の視線の先には碧眼の瞳。
せめて目隠ししててよ。こんな私を、マジマジと見ないでよ。
「……恵に皆実の呪力流したら、恵が壊れるだろ」
そう言って、五条先生は自らまた私の唇に触れる。
舌と舌を触れ合わせて、私の汚い感情ごと飲みこむ。
人を壊すほどの呪いを受け入れて、それでも五条先生は顔色ひとつ変えなくて。
「……あっ、ふぅ、、んっ」
口端から溢れる唾液も、五条先生は舐めとった。
響く水音は、私と五条先生が触れ合っている証。
「……恵、もう大丈夫だから」
五条先生は自分の背後に呆然と立つ伏黒くんを横目に見る。
こんなところ見せてしまって。
呪いそうになって。
申し訳ない気持ちはあるのに、今の私は五条先生のことしか考えられなくて。
ギュッと五条先生の服を掴んだ私を、五条先生は優しく抱きしめてくれた。
「……事件の報告を頼む。それと、伊地知に子どもたちを硝子のところに送ったら迎えに来るよう伝えて」
「……はい」
「恵」
五条先生の優しい声。
どうして呪いを受け止めてるのに、こんなにもこの人の体は温かいんだろう。
「このことは黙ってて」
「……言いませんよ。それより」
小さく答えて、伏黒くんが私のことを見た。
「綾瀬を、頼みます」