第4章 呪いの享受
※伏黒視点
綾瀬の言う通り、呪霊は綾瀬と別れた場所から2階上……4階の奥、4年2組と書かれた教室の中にいた。
《クククククッ、あ゛の゛ガ キ゛に゛か゛ん゛し゛ゃ゛し゛な゛い゛と゛》
石碑のような姿の異形。
手足をムカデみたいに生やして、悲壮の叫びを上げたような目と口が石碑に刻まれている。
そのうじゃうじゃした手で、4人の少年の髪を掴んで振り回して遊んでる。
「いやだ……っ、いやだぁぁああ! たすけてぇぇ!!!」
泣き叫ぶ子どもの声が耳をつんざく。
情報通り、呪霊は格下。
瞬殺できる。
「玉犬!」
俺の声に支持されて、白と黒が呪霊に襲いかかる。
呪霊の手足を噛みちぎり、まずは少年たちを呪霊の手から解放する。
呪霊本体のみなら白だけで充分。
「蝦蟇!」
黒の式を解いて蝦蟇を呼ぶ。
その長い舌で4人の少年を絡めとり、その体内に収めた。
蝦蟇の行動すら怖いのだろう。
少年たちはビービー泣いている。
(泣く元気があるなら問題ない)
「あとはオマエを祓うだけだな」
《ど う゛せ゛ま゛た゛あ゛の゛ガ キ゛が そ゛い゛つ゛ら゛コ゛ロ゛す゛》
クククククッと石碑型呪霊が嗤っている。
呪霊の言葉なんて大抵フェイク。呪術師を惑わせるだけの意味のない単語。
それなのに、やけにその台詞は引っかかった。
(ガキって、どいつのことだ?)
蝦蟇の中にいる少年4人か? いや、おそらく違う。
そこにいる人間のことを『あの』とは表現しない。
(そういえば、行方不明者は……5人)
あと1人はどこだ?
呪霊に殺された?
「おいっ、あと1人……子どもはどこにやった」
呪霊にそう言葉を投げるのと同時、玉犬がその頭に喰らいついた。
呪霊を祓えば、事件は解決する。
ただ、行方のわからない1人の少年と……呪霊の言葉が気になった。
それと、まだやってこない同期のこと。
「…… 綾瀬のやつ、マジで動けなくなってるんじゃないだろうな」