第4章 呪いの享受
《アイツらは死んでいい》
《助ける価値なんてない》
《僕を助けて》
《アイツらは喰われて当然》
《僕のこといじめたからだ》
《ざまあみろ》
一気に流れてくる呪いの声が、身体の中でうるさくわめいてる。
頭が、変になる。
「怪物って……」
「学校の『慰霊碑』にしばりつけられてたんだ。解いたらアイツら喰べてくれるって」
少年は笑ってる。
呪霊を放ったのは、この小さな男の子。
「お姉ちゃんもアイツら助けないでよ」
「バカ、言わないで。……私は、みんなを助けるよ。……君と、同じように」
「ダメだよ。お姉ちゃんも僕の言うこと聞いて。その代わり僕がお姉ちゃんの言うことなんでも聞いてあげるから」
《僕にさからうなよ》
うるさい。
黙って。
「お願いだよ、お姉ちゃん」
《なんでコイツ、僕の言うこと聞かないんだろう》
うるさく声が喚く。
黙って、あともう少しできっと、伏黒くんが全部終わらせるから。
まだ、待って。
「あの怪物と同じようにアイツら喰ってきてよ」
《さっき僕の顔についてた気持ち悪いの喰べたみたいに》
「お姉ちゃん、人間みたいな格好してるけど。そのきれいな顔もどうせ作り物だよね」
「綾瀬!」
伏黒くんの声がした。
でも伏黒くんの声は、流れてくる声に容易にかき消されて。
「あの怪物と一緒。だってお姉ちゃん、アレと同じ匂いがするもん」
《汚い手で僕を触らないでよ。醜い怪物のくせに》
呪いの声が、私の理性を切り裂いた。