第4章 呪いの享受
階段を上がる度、身体が裂かれるように痛くなる。
たぶん、呪霊は上にいる。
流れてくる呪力の感じからして、おそらく生存者がいる。
「伏黒くん、たぶんあと2階上。……そこに呪霊がいる」
「玉犬も上に走って行った。……そんなことまで分かるんだな」
「便利でしょ」
「便利そうに見えない顔して言うなよ」
伏黒くんは呆れ顔。
でも私の走るスピードに合わせてくれてる。
「五条先生が言ったでしょ。私は守らなくていいって。子どもたちたぶん生きてる。だから先に行って」
伏黒くんは最後まで心配そうな顔してたけど。
私がもう一回「行って」と告げると、階段を3段飛ばしで駆け上がった。
伏黒くんが行ったのを確認して、私は立ち止まり、しゃがみ込む。
(動け、バカ。……こんなんじゃ何もできない)
心とは裏腹に身体はどんどん動かなくなる。
痛みが強くなるほど神経までやられてきて、身体が痺れてくる。
ポケットの中には注射器がある。
でもこんなところで血を抜いて、処分できなきゃ呪霊の餌になるだけ。
考える私の耳に、小さな足音が聞こえた。
「……え?」
振り向いたら、そこには小さな子どもがいた。