第4章 呪いの享受
伏黒くんと2人きり。
帳が下りて、伏黒くんと校舎の玄関で立ち止まる。
「5人の生徒が行方不明、か」
車の中で伊地知さんが言っていたことを伏黒くんが口にする。
呪霊が現れた校舎で、行方不明。
最悪の事態が起きている可能性は高い。
「玉犬」
伏黒くんが両手を合わせ唱えると、白と黒の犬が現れた。
「それ、術式……?」
「俺の式神だ。……それよりオマエ大丈夫か? 冷や汗すごいぞ」
伏黒くんが私の額に手を当てようとする。
私は咄嗟に伏黒くんから飛びのいた。
「私に触ったら、その式神さん消えちゃうよ」
「……忘れてた、助かる」
伏黒くんは伸ばした手を引っ込めて、自分の頭をかいた。
空気、悪くしちゃったよね。
「私は大丈夫。ちょっと、身体が痛いだけ」
「やっぱり禪院先輩との特訓で怪我してたんだろ」
「違う、違う。私、本当に怪我とか物理的に痛いのは大丈夫だから」
私はそう口にして、校舎の中に足を踏みいれる。
また、身体が軋む音がする。
やっぱり五条先生の言うことを聞かずに、血を抜いておけばよかった。
「なら、今身体が痛いのはなんでだよ」