第30章 反魂人形
札幌の街並みを楽しみつつ、僕は七海の隣を歩き続ける。
大通りの道は賑やかだ。
標識を見ながら歩けば迷わず目的地に辿り着けるのも、札幌の道だからこそ。
「まあ全部が全部、素直に格子状の道になってる、ってわけじゃないんだけどさ。スポットを巡るルートは組みやすいよね」
そう言いながら、僕は二つ折りにしたパンフレットを取り出す。
「なんですか、その地図」
何って……。
嘘だろ、オマエ何年俺と先輩後輩やってんだよ。
「オイオイオイ七海ィ。オイオイオイ、オイ」
「雑にイラつきますねそれ」
「しっかりしてくれよ。オマエ、ここで僕が取り出すんだから五条悟スイーツマップ以外に何があるってんだよ」
「ですから、そういうのはお一人でどうぞ」
「却下。明日、デートするのにどこのスイーツが一番美味しいか確かめときたいんだよ」
僕が素直に説明してあげると、なぜか七海は「めんどくさい」と顔に書いて僕を見てきた。
「……また現地の女性を引っ掛けたんですか、アナタ」
「違ぇよ。語弊のある言い方やめろ」
「何も間違ったことは言ってませんが」
七海が今日何度目かのため息を吐く。
せっかくの北海道でコイツはいったい何回ため息を吐くつもりなんだろうか。
しかも、大先輩に隣歩いてもらっておいて、どういうこと?
「先輩ヅラし甲斐の無い奴だなぁ」
「アナタも昔から、慕い甲斐のない先輩でしたよ」
失礼なことを言い散らかして、七海は心底嫌そうな顔のまま、その疑問を綴った。