第30章 反魂人形
「……というか、ほんと、なんでついて来たんです? 別に二人も呪術師が必要な案件じゃないですよ、今回は。まして――」
「まして超イケメン最強呪術師の五条悟が出る幕じゃない、だろ?」
七海のことだからいいツッコミをくれるだろうと思っていたんだけど、完全に無視された。
というかたぶん、言い返す言葉もなかったんだろうな。事実すぎて。
「確かに心配ないとは思うよ。単独での調査とはいえ、任されたのがオマエなら一人でもきっちりこなすだろ」
「じゃあなんで来たんです?」
「たぶん心配ない案件を、絶対心配ない案件にするためだよ。一人で十分な案件とはいえ、一級呪術師が出張るようなことなんだろ? それもどうやら悪徳な呪詛師か、その『もどき』絡みだって聞いてるしね」
七海の予定を聞き出した際、伊地知がその情報も付け加えてくれた。
「……相手も一級か特級に値する呪詛師かもしれないと?」
「あくまで『かもしれない』だけどね」
「そんなあやふやな可能性のために、わざわざ出向いてくる人じゃないでしょ、アナタ」
見透かしたように、僕の考えを読もうとする。
生意気すぎなんだよ。本当に、可愛げない後輩だ。
「よき理解者ヅラ、五臓六腑に染みわたるよ。ま、今はそういうことでいいだろ? 案外僕も多忙な日々に疲れて、北にバカンスに来たくなっただけかもしれない」
「そう口に出した時点で、本命は違うわけですか……」
うん、オマエの言う通りだよ。
でもその話は、この任務が終わってからでいい。
「あ、七海。あれ見てあれ」
だから僕は七海の疑念を無視して、目に映った『ジャガバター』の看板を指さした。