第30章 反魂人形
※五条視点
(最後まで、不安そうな顔してたな)
札幌の街並みを歩きながら、部屋を出て行く瞬間の、皆実の顔を思い出す。
一度死ぬ前までは、僕がどこかに行くってなっても「ふーん」って感じの顔して、それが逆に僕の心を煽ってたんだけど。
生き返った後の皆実は、ずっと僕の存在に怯えている。
僕がいなくなったらどうしようって、不安になって泣きそうな顔をしている。
(……一度も笑ってないんだよな、皆実)
生き返ってから今日に至るまで、皆実は僕の前で笑顔ひとつ見せない。
死ぬ前だって、僕の前ではそんなに笑ってはくれなかったけど。それでも困ったような笑顔をくれていた。
それが今では、泣き顔ばかり。
そんな不安定なことになってんのも、皆実自身の問題ではあるんだけど。
皆実が宿儺とどういう縛りを結んだのか、だいたいの想像はできている。
ムカつくどころの話じゃないけど、おそらく悠仁を人質にとられて、その縛りを結ばなきゃ生き返れなかったんだろうって。
(ほんと、バカ)
それが分かっているからといって感情を抑えきれるわけじゃなくて。
僕もちゃんと人間だったって話。
それで終わりなら、本当に最低だと思うよ。
だから、僕は……皆実を責めた分ちゃんと、壊れた皆実を治すことだけを考えた。
その結果、こうしてここにいるんだけど。
(やっぱ、こうするしかないんだよなー。……すっごく嫌だけど)
大きなため息を吐いて、僕は隣を歩く仏頂面の後輩に声をかけた。
「七海、北海道クイズしようぜ」