第30章 反魂人形
「え……すごい」
部屋の中に、外の景色が一望できる露天風呂がついていた。
「サイトでこれ見てさー、他の情報はろくに見ずに予約しちゃったんだよね。高けりゃ間違いないと思って」
戯けたように言って、五条先生が私の手を引っ張る。
私のことを抱きしめるように、腰を抱いて。
「僕が任務に行ってる間……ここでゆっくりしてて。ちゃちゃっと終わらせてくるから」
2泊3日の1日目。
五条先生は、その『後輩』さんと任務に出かける。
だから、私はここでお留守番。
「観光は僕と一緒に行こう。だから今日は暇だろうけど、白クマ練習と……もし呪力が切れちゃったら、そこに観光パンフ置いてるから僕と明日行く場所決めといて」
任務が1日で終わる保証なんてないのに。
五条先生は私に時間を割く約束をくれた。
「今日は遅くなるかもしんないけど、待ってて」
優しいキスを私に落として。
「帰ってきたら、一緒にこの温泉入ろ」
まだ五条先生は目の前にいるのに。
甘い囁きが、もうすでに、五条先生の帰りを待ち侘びさせた。