第24章 邁進
呪霊は唖然とした表情で五条先生を見つめてる。
対する五条先生は、軽薄な態度を変えない。
「んーー、簡単に言うと当たってない」
《馬鹿な。さっきとはワケが違う。儂は確かに触れて殺した》
「君が触れたのは僕との間にあった『無限』だよ」
呪霊は首を傾げる。
おそらくこの呪霊は、五条先生の術式を知らない。
「教えてあげる、手出して」
何も知らない呪霊に、五条先生はご丁寧に説明してあげようと手をかざした。
そしてその言葉に素直に従って、火山頭が五条先生の手に自らの手をかざす。
「ね」
その手は、五条先生に触れる寸前で、ピタリと止まった。
「止まってるって言うか、僕に近づく程遅くなってんの。で、どうする?」
「僕はこのまま握手してもいいんだけど」
五条先生が『無限』を解いて、呪霊の手に触れる。
《……断る》
「照れるなよ、こっちまで恥ずかしくなる」
そうして呪霊の指に、自らの指を絡めた。
《貴様っ!!》
離すまいと片手を握りしめて、五条先生が呪霊の鳩尾を殴る。
「まだまだ」
呪霊の口から吐き出される血も、五条先生の無限に阻まれて、五条先生を汚すことすらできない。
頭で処理できない程の速さで、五条先生は攻撃を繰り返す。
「無限はね、本来至る所にあるんだよ。僕の呪術はそれを現実に持ってくるだけ」
いつのまにか、口から大量の血を吐き出している呪霊に、五条先生はご丁寧な説明を続けて。
「『収束』『発散』、この虚空に触れたらどうなると思う?」
人差し指を掲げて、唱える。
「術式反転……『赫』」
瞬間、呪霊が崖の下、森の奥に飛ばされて消えていく。
五条先生もそれを追って、森の奥へ駆け降りていった。
(まずい、見失った!)
急いで立ち上がろうとするけれど、足にうまく力が入らない。
胸に抱えた白クマは眠ったまま。
(早く、呪力の制御……できるようにならなきゃ)
不必要な呪力を吸って、動けなくなってたら。
いつまで経っても足手纏いだ。
(動け、私!)
身体を叩いて、立ち上がる。
私は破壊された、足場の悪い道を辿って、崖の下に降りて行った。