第24章 邁進
定期的に虎杖くんがクマに殴られてる音を背景に、私は全然歌わないクマを抱えていた。
もう何度目だろう。五条先生がクマに呪力を流して、私に差し出す。
(手のひらに、乗る瞬間に……そこに壁を作る、イメージ)
でも私の頭の中に壁は生まれない。
どうしてもイメージが不足する。さっきからこの失敗の連続だ。
もっとちゃんと、呪力の侵入を防ぐイメージ。
『普通、僕には触れないんだよ。僕との間の無限に阻まれて』
五条先生の言葉が頭によぎる。
「……あ」
手のひらに無限をイメージする。
絶対に触れることのできない距離を、手のひらにイメージした――瞬間。
「♪♫♩♬♫――」
(歌った!)
確かに私が触れている。
その事実に喜んだ瞬間、呪骸がまた眠りについた。
「3秒もないくらいだったね」
五条先生が、厳しい現実を口にする。
「でも、大きな一歩だ」
一度落ち込ませておいて、嬉しい言葉をくれる。
私の頭に手を乗せて、今度は優しく撫でてくれた。
触れた五条先生の呪力を、やっぱり私は懲りずに吸ってしまう。