第24章 邁進
「呪力を吸収するのは流呪操術の術式効果の一つだよ。だからやり方次第で、制御はできるはずだ」
できないとは言わせない。
そんな圧を感じさせながら、五条先生が呪骸を私の手から離すように持ち上げる。
途端にまた、呪骸が心地いい音色を奏で始めた。
「この呪骸には響音術式が付与されてる。呪力を篭めてあげればこんな風に音を奏でるし、逆に呪力が枯渇したら眠ってしまう」
五条先生が呪骸から手を離して私の手の上に返す。
すると呪骸は歌うのをやめて、すぐに眠りについてしまった。
「ま、しばらくはこんな感じで皆実が呪力吸収して呪骸の呪力をすぐ枯渇させちゃうだろうから。最初のうちは僕のそばで訓練。その都度、僕が呪骸に呪力を流すよ」
呪骸が眠ってしまったら、私がその呪力を吸ってしまったということ。逆に歌わせ続けることができたら、その間私は呪骸の呪力を一切吸っていないということ。
「この呪骸に触れている間、呪骸をずっと歌わせる。これが皆実の課題だよ」
とても分かりやすい訓練。
でも、そもそも呪力を吸収しない方法が私には分からない。
「術式を使う時と一緒。呪力の流れを読め。触れたところにダムを作るイメージとかで、できるんじゃない?」
五条先生がまた呪骸に呪いを篭めて、私に渡す。
「手のひらに、ダム……」
全然、イメージがわかない。
手に触れる呪力じゃなくて、ひたすらダムのイメージに頭が囚われていたら。
すぐに五条先生の呪力が体に流れ込んで、クマが眠ってしまった。
(やばい、できる気がしない)
早くも絶望を感じてしまう。
そんな私の頭を五条先生がコツンと小突いた。
「分かんないなら、できるまで片っ端からやっていくこと」
優しくない、厳しい言葉。
でもそれは理不尽じゃなくて、先生の『先生らしい』言葉だった。
「……はい。また、呪力篭めてください」
五条先生に白クマを差し出す。
真剣な顔でクマを見つめる私を、五条先生は何も言わずに見下ろしてた。