第24章 邁進
「悠仁はこれでよし」
五条先生は一息ついて、今度は私に顔を向ける。
「で、皆実にはコレあげる」
そう言って五条先生が私にも、白いクマのキモカワ呪骸を差し出す。
でも虎杖くんのとは少し違って、ボクシンググローブをつけていないし、何より。
「♪♫♩♬♫♪♩♬」
清らかな声でクラシックのような音色を奏でてる。
(すでに、起きてる……!)
虎杖くんみたいに呪力を流している間は寝ているわけでもない。
絶対に殴られる予想はできていたから、歯を食いしばってその呪骸に触れた。
「あ、れ……?」
けれど呪骸は私に殴りかかってこない。
それどころか歌うこともやめて、眠りについてしまった。
不思議な行動をする呪骸に、私が首を傾げたら、五条先生がやれやれとため息を吐いた。
「皆実と悠仁は同じ呪力の制御でも、意味合いが全然違う。皆実に必要なのは、呪力を吸収しない訓練。当然、使う呪骸も同じじゃないよ」
五条先生は静かに教えてくれる。
「皆実の場合、呪力を吸収しようと思えば無限に吸収できる。でもそれで体が参っちゃうし、僕たちも皆実がいる環境で術式が使いにくい。だから、呪力の吸収・無効化を自己調節できるようにしろ」
「でも呪力を吸収するのは体質の問題だから、自分で調節なんて……」
私がそう言いかけたら、五条先生の纏う空気がピリッと凍りついた。
「……体質じゃないから、その身体が治ったんだろ」
冷たい声が、私のすべてを見透かすように響いた。
「……すみ、ません」
「別に謝らなくていい。で、話を戻すけど」
五条先生は凍てついた空気をすぐに解いて、『先生』に戻る。