第3章 はじめての平穏
「禪院先輩の制服、なんでセーラー服みたいな襟ついてないんですか?」
私は自分の制服についてる襟をひらひらと振ってみせる。
取り外し式なのかなと思って引っ張ってみたけど、取れなかった。
しかも私のスカートはひらひらプリーツなのに禪院先輩はタイトスカート……なぜ?
「は? その襟、自分でカスタマイズしたんだろ?」
カスタマイズ……???
私はバッと後ろを振り返る。
これ以上ないくらいに口角を上げた五条先生が目に映った。
「皆実に似合うように僕がカスタマイズしたよ。センスいいでしょ?」
「これ、五条先生がやったんですか。てっきり綾瀬がそっち系の女子なのかと思ってました」
びっくりした顔の伏黒くんに私がびっくりするよ。そっち系ってなに!
「でも似合ってるぞ、皆実。その制服が似合う女子はなかなかいないだろ」
「しゃけしゃけ」
パンダ先輩がグーサインしてる意味も、狗巻先輩が何言ってるかも全然分かんないけど、きっとこれは哀れな私へのフォローだ。
「ま、いいじゃん。制服なんて着るだけなんだし」
「着るのが苦痛なんですが」
「うっそー。僕は嬉しい♡」
五条先生の楽しそうな姿にげっそりした。
そんな私の顔を見て、さらに五条先生が幸せそうな顔するから悲しくなった。
きっとこの流れまで込みでカスタマイズしてる、絶対。
「ま、挨拶は済んだことだし。……真希!」
五条先生はお得意の空気の切り替えをして。
いつから持ってたのか、長い棍棒を禪院先輩に投げた。
「その棒でこの子鍛えてあげて。弱いからさ。はい、皆実にもどうぞ」
今から高跳びでもするのかなって、呑気に思ってた私はやっぱりバカなんだと思う。