第3章 はじめての平穏
はじめての学校。
入学した瞬間に、嫉妬で呪われたり。
下心で呪われたり。
学校の中で渦巻く感情に呪われることが常だったのに。
この学校は、とても静か。
「悟の彼女かと思ってビビったぞ。よろしくな、皆実」
「……パンダが、喋った」
静か、だけど。
普通じゃなかった。
五条先生に連れられて先輩方に挨拶、といっても今は3年生も2年の乙骨先輩って人も不在みたいで、残っている3人の先輩に挨拶することになった、はずなんだけど。
なんで喋るパンダが目の前にいるんだろう。
え、着ぐるみ? 着ぐるみだよね?
頭の整理がつかない私の耳に、今度は単語が聞こえてくる。
「ツナマヨ!」
声の方を向いたら、口元を隠した色素の薄い男子がいた。
ツナマヨって、あのツナマヨ? それとも方言? 意味は?
「つ、ツナマヨ?」
「ああ、棘は呪言師だからおにぎりの具材しか言わないぞ」
「……パンダが解説してる」
なんで普通の人っぽい人の代わりにパンダが喋ってるんだろ。
え、私もしかして今、幻覚見てる??
そう思って伏黒くんのほうをバッと向いたら、相変わらず冷静な様子だった。
「そこのパンダがパンダ先輩、そっちの口隠してんのが狗巻先輩。どっちも2年。んで、そっちが……」
「呪力の持ち腐れってオマエか?」
伏黒くんの指す方へ顔を向けたら、美人なスタイルのいい女子がいた。同時に身体の中を声が流れる。
「禪院先輩。口悪いけど呪具を使わせたら学生一」
「私のことは苗字で呼ぶなって言ってんだろ」
やっと普通な人が現れた。
ちょっと怖そうだけど。
ん? でも、あれ? 禪院先輩の制服、シンプルじゃない?