第24章 邁進
「皆わずかな感情の火種から呪力を捻出する訓練をしてるんだ。逆に大きく感情が振れた時、呪力を無駄遣いしない様にもね。訓練方法はいくつかあるけど、悠仁にはかなりしんどいのやってもらうよ」
「ど……どんな?」
虎杖くんがゴクリと唾を飲む。
すると五条先生がテレビの横に積み上げていたDVDの箱を数枚取って、虎杖くんに見せるように掲げた。
「映画鑑賞!」
「映画……鑑賞??」
「そ。名作からC級ホラー、地雷のフランス映画まで、起きてる間はブッ通しでだ」
虎杖くんは不思議そうな顔をしてる。
映画を観ることが訓練っていう、その意味が私にも分からなくて。
2人して首を傾げてたら、五条先生がその答えを見せた。
「勿論ただ観るだけじゃないよ。コイツと一緒に観るんだ」
「何このキモカワイイ人形」
鼻風船を膨らませて眠ってる黒いクマの人形を五条先生が掲げてる。
たぶん、この感じは……入学試験の時の呪骸と同じ。
「カワイイか? 学長特製の呪骸だよ」
(やっぱり)
「あー!! やっぱりか! ……で? 全然要領得ないんだけど」
「焦らない、焦らない」
呪骸を見せられたところで、やっぱり稽古の意図は掴めない。
疑問を隠せない虎杖くんに、五条先生は教えてあげる。
「そろそろだよ」
その言葉と同時、呪骸が目を覚まして虎杖くんに殴りかかった。