第24章 邁進
虎杖くんの意気込みを聞いた五条先生は、そのまま虎杖くんに指導を始める。
「ではまずあちらの缶ジュースをご覧ください」
机の上に置いている缶ジュースに視線を向ける。
すると突然、右の缶ジュースが壁にぶつかって凹み、左の缶ジュースはそこから動くことなく捻れて潰れた。
「おおっ!?」
「こっちが『呪力』でこっちが『術式』」
右から左、順に指して、五条先生が教えてあげる。
その説明を聞いて、虎杖くんは険しい顔をした。
「成程、わからん」
「皆実は分かる?」
話を振られて、私も首を捻った。
高専に来て何回か受けた授業で、なんとなくその違いは理解したつもりだけど、説明しろと言われると難しい。
「ニュアンスは分かるんですけど、説明はできないです」
私がそう答えると、五条先生は「うーん、そうだね」と頭を捻った。
「『呪力』を『電気』、『術式』を『家電』に例えようか」
授業みたいなことを口にして、五条先生がその違いを分かりやすく教えてくれる。
「『電気』だけじゃちょっと使い勝手悪いでしょ。だから『家電』に『電気』を流して様々な効果を得るわけ。こっちはただ『呪力』をぶつけただけ。こっちは『呪力』を『術式』に流して、発動させた呪術で捻ったの」
すごく分かりやすい説明だったから、思わず驚いた。
先生のことだから「分かんない意味が分かんない」って感じの、高度な説明してくると思ったのに。
虎杖くんにも今の説明は分かりやすかったみたいで、何かを思いついたように人差し指を立てた。
「つまり! これからチョベリグな術式を身につけると!」
「いや、悠仁は呪術使えないよ」
明るい顔をした虎杖くんを、五条先生はキッパリ否定した。
「簡単な式神とか結界術は別として、基本的に術式は生まれながら体に刻まれてるものだ。だから呪術師の実力は才能がほぼ8割って感じなんだよねー」
オブラートに包んでるけど、それは虎杖くんに『才能なし』と言っているようなもの。
ダイレクトに言葉のダメージを受けた虎杖くんはその場に仰向けで倒れた。