• テキストサイズ

【呪術廻戦】無下限恋愛

第24章 邁進


 住宅街の一部屋。
 そこに俺は、単身やってきた。
 目の前には、あのとき少年院を訪れた女性――岡﨑正の母親がいる。

「自分達が現場に着いた時には既に息子さんは亡くなっていました」

 その事実を、ちゃんと自分の口から伝えたかった。

「正直自分は少年院の人達を助けることに懐疑的でした」

 今でもその気持ちは変わらない。
 俺にはどうしても、あの少年院の人達を命を賭して助ける理由が見つからなかった。

「でも仲間達は違います」

 虎杖は最後まで万人が『正しい死』を迎えられるように、って考えてた。
 あんな凄惨な現場を目の前にしても尚、アイツの性根は変わらなかった。

「成し得ませんでしたが、息子さんの生死を確認した後も遺体を持ち帰ろうとしたんです」

 なんの迷いもなく、虎杖はそうした。
 非道な俺と違って。
 あの遺体と、そして今目の前にいるこの女性のことを、虎杖は親身に考えていた。
 どうしても、それだけは伝えておきたくて。
 それを伝えるためだけに、俺は単身ここにやってきた。

「せめて、これを」

 女性の前にその名札を差し出す。
 虎杖と綾瀬をあの場に置き去りにして、それでも俺はこの名札を剥ぎ取ることしかできなかった。

(残念ながら遺体は、特級の生得領域と共に消滅してしまいました)

 そんなことを『呪い』を知らない人間に言ったところで、混乱させるだけだから、俺は言葉を濁す。

「正さんを助けられず、申し訳ありませんでした」

 深く頭を下げる。
 虎杖ならきっと、こうするだろうと思った。

「……いいの、謝らないで」

 頭を下げたままの俺に、女の人の咽び泣く声が聞こえる。

「あの子が死んで悲しむのは私だけですから」
/ 612ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp