第24章 邁進
(ああ……この人はマジでハートが強いから、今は会いたくなかった)
心が折れかけてる俺を見透かす顔は、同じ血縁でも俺とは全然違う。
「なんだ、いつにも増して辛気臭いな、恵。……お通夜かよ」
お通夜だよ。
そう返してやりたいけど、この人も綾瀬のことは知っているはずで。
短い間だったとは言え、稽古をつけていた後輩の死を知っても尚、心から気丈に振る舞えるこの人は、やっぱりハートの出来が全然違う。
「禪院先輩」
他人行儀にその姓を呼んだら、案の定禪院先輩は眉を寄せた。
「私を名前で呼ぶんじゃ――」
「真希。真希!!」
木陰に隠れきれていないパンダ先輩と狗巻先輩が、禪院先輩を大声で呼んだ。
「まじで死んでるんですよ、昨日!」
「あ゛? 皆実のことは聞いたっての。胸糞悪ぃから何度も言うな! どうせこんな辛気臭い空気漂わせてるだろうと思って来てんだよ。邪魔す――」
「違う違う! 俺も何度も言いたくないけど死んでんの! 皆実の他に、一年坊がもう一人!」
「おかか!」
「は、や、く、言、え、や」
禪院先輩が固まった。
どうやら虎杖の死については、知らなかったらしい。
「皆実のことで落ち込んでるだろうと思って、こっちも同じ気持ちだから背中叩いてやろうとしたんだよ! もう一人死んでるとか聞いてねぇし!」
「だって皆実のこと聞いた瞬間、真希が他の話全部聞かずに出て行ったんだろ」
「しゃけしゃけ」
「知らねぇよ! これじゃ私が血も涙もねぇ鬼みてぇだろ!」
「実際そんな感じだぞ!? イヤ、真希すごいよ。もう一人の一年のことを知らなかったにしても、正直皆実のことで俺と棘もかなりお通夜気分だもん」
「ツナマヨ」
お通夜気分とは思えないほど、ガヤガヤうるさい。
禪院先輩どころか、二年の先輩はみんなイカれすぎだろ。
でも、きっと綾瀬がこれを見ていたら、小さく笑ってんだろうなって。
(また、綾瀬のこと考えてる)
考えるなって言い聞かせてもどうしても、まだアイツが隣にいる気がしてしまう。