第24章 邁進
※伏黒視点
考えないようにしようとすればするほど、溢れ出す感情に心が負けていく。
目を閉じれば、綾瀬が胸に小刀を突き刺す瞬間と、虎杖が俺の目の前で倒れる瞬間が頭に浮かんだ。
「長生きしろよって……自分が死んでりゃ世話ないわよ」
俺の隣、仏閣のような造りの校舎の前の階段に座って、釘崎が呟いた。
病院で治療を受けて帰ってきた釘崎が、最初に受けた報告が綾瀬と虎杖の悲報だった。
釘崎のことだから「アンタがついててなんで」とかなんとか、キレてくるんじゃねぇかなって、そんなことを冷静に予想していたのに。
虎杖の最後の言葉を伝えた俺に、釘崎は呟くように言葉を漏らした。
釘崎と意見が合うことなんて一生ないと思っていたけれど、その呟きだけは同感だった。
「……皆実は、最後になんか言ってた?」
虎杖の言葉を伝えたたからか、釘崎が綾瀬の言葉を気にした。
正直、俺はアイツが口にした、本当の最後の言葉を知らない。
俺が知るアイツの最後の言葉は、虎杖の伝言だったから。
でも。
綾瀬が虎杖経由で告げた最後の言葉は、俺の心をいまだに苦しめてる。
「『強くなってね』……だとよ」
答える声が、喉に詰まった。