第3章 はじめての平穏
寝室のクローゼットには主に五条先生の服が入ってる。
私はお洒落に無頓着だから、普段着や寝間着も五条先生のを借りてる。
私のものは前の高校の制服と、呪術高専の制服と、あとは……五条先生がいつのまにやら用意してた下着類のみ。
なぜかサイズまでピッタリなところが怖くて理由は聞けなかった。
前の高校の制服は紺色のブレザーにグレーのパネルスカート。
地味だけど、着心地はよかった。
この制服に初めて袖を通した時は、少しだけいろんなことに期待してた気がする。
もしかしたら楽しい学校生活が送れるかもしれない、とか。
私と同じように呪いが見えたり、聞こえたりする人がいるんじゃないかな、とか。
結局、全部私の幻想で終わったけど。
苦笑して、私は高専の制服を手に取る。
色合いは地味なのに、前の高校の制服と比べるとなぜか派手に見える。
たぶんオシャレ、なんだと思う。
すっごく着る人選ぶけど。
本当にみんなこの制服なのかな。
五条先生のことだから「実は本当の制服はこっちでしたー」とか言って、普通の制服出してきそうな気もする。
「まあでもこれしか着るものないしね」
高専の制服をベッドの上に置いて、着ていた服を脱いだ。
ピーンポーン……
誰かの訪問の合図がする。
さすがに着替えてる途中だし、何よりここは五条先生の家だし。
下手に私は出ない方がいいよね。
そう思って、履いてたぶかぶかのズボンも脱いだ、瞬間。
「五条先生、いい加減スマホに出てくだ……さい」
寝室の扉が開け放たれる。
黒一色の制服を着た黒髪の男子がそこにいて。
苛立っていたような顔が、みるみる赤く染まっていく。
あれ……私って今。
「皆実の下着姿見て、恵ってばエッチ♡」
今にも沸騰しそうな男子の背後には、お風呂上がりの五条先生。
何かがプツンと切れる音がして。
「先生が、電話にでないからわざわざ出向いたんでしょうが!!!」
顔を真っ赤にして、まるで噴火した火山みたいだった。