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【呪術廻戦】無下限恋愛

第20章 呪胎戴天


「そっか。伏黒は頭がいいからな。俺より色々考えてんだろ」


 虎杖らしい。

 能天気な返事。


「オマエの真実は正しいと思う。でも俺が間違ってるとも思わん」


 笑った虎杖は、清々しい顔をしていた。

 寸前まで宿儺に押さえ込まれていた魂が、その主導権を取り返すほどの力を得た理由は、ただ一つ。


「……綾瀬は、ちゃんとそこにいんのか」


 自分で尋ねておいて、声が震えた。

 そんな俺の感情を察して、虎杖は気まずそうに頭をかいた。


「ああ。いる。皆実もバカだな、俺なんかのためにさ」

「綾瀬もオメェもバカすぎんだよ」


 俺の言葉を、なんで笑って聞いてんだよ。

 状況理解してんのかよって。

 文句なんてたくさんあんのに。

 ろくなこと言えねぇんだよ。


「でもおかげで、こんな俺でもオマエは守れたよ」


 守らなくて、よかったんだよ。

 俺のことなんか。


「それと、皆実から伝言」


 そんなの……聞きたくねぇんだよ。


「『強くなってね』……ってさ。最後に言うことかよ、それ」


 虎杖が頭の中の綾瀬にそんなことを言ってる。

 綾瀬が『え、おかしいかな?』なんてマヌケ面してるのが想像つく。

 そのマヌケ面もどうせ、呆れるくらい綺麗なんだ。


(……ふざけんなよ)


 強くなったら、次はちゃんと俺も頼れよ。

 五条先生じゃなくて、俺のことを……好きになれよ。

 オマエに言いたいことなんて、まだまだたくさんあるんだよ。

 アホ綾瀬。


「あー悪い。そろそろだわ」


 虎杖の口から血が滴り落ちる。


「伏黒も釘崎も。五条先生は……心配いらねぇか。いや、でも皆実がいなかったら……分かんねえな」


 オマエまで、いなくなるなよ。

 2人して……俺に足枷だけ残して。


「長生きしろよ」


 降り続く雨が、俺の顔を濡らした。
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