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【呪術廻戦】無下限恋愛

第20章 呪胎戴天


《それにしてもオマエの式神、影を媒体にしているのか》


 今さら、バレた所で問題はない。


「ならなんだ」

《フム。分からんな。オマエあの時、何故逃げた》


 宿儺の発言は、俺に理解できない。

 疑問符を浮かべたままの俺を無視して、宿儺は勝手に話を進める。


《宝の持ち腐れだな。まぁいい。どの道、その程度ではココは治さんぞ》


 心臓を差して、宿儺は笑う。

 バレバレか。

 俺の行動は、全部……宿儺の掌の上。


《つまらんことに命を賭けたな》


 つまらないこと、か。


《この小僧にそれ程の価値はないというのに。……皆実も無駄死にだ》


 綾瀬の死は……無駄だったか?

 虎杖には、本当に価値がなかったか……?





『じゃあなんで俺は助けたんだよ!!』






 不平等な現実のみが平等に与えられている。





『誰かを呪う暇があったら、大切な人のことを考えていたいの』





 疑う余地のない善人だった。

 誰よりも幸せになるべき人だった。

 それでも津美紀は呪われた。





『でもそれは、やっぱり不平等じゃん』





 綾瀬は、津美紀に面影を重ねた人だった。

 お人好しの偽善者。

 でも、誰よりも幸せにしたい人だった。

 その綾瀬は、俺を……みんなを、助けるために自分の命を犠牲にした。


(……クソみてぇな現実)


 俺の性別も知らず〝恵〟なんて名前を付けた父親は今も何処かでのうのうと生きている。


 因果応報は全自動ではない。

 悪人は法の下で初めて裁かれる。

 呪術師はそんな〝報い〟の歯車の一つだ。





『不平等に守られるのはやめようって、決めたんだ』





(やっぱりオマエは間違ってるよ……綾瀬)


 少しでも多くの善人が、平等を享受できるように……。


 俺は不平等に、人を助ける。


《いい……いいぞ。命を燃やすのはこれからだったわけだ》


 左手を突き出して構える。

 綾瀬がそうしたように、俺も。


《魅せてみろ!! 伏黒恵!!》


 命をかける。


「古瑠部由良由良……『八握――……っ!」


 降り続く雨が、その呪いごと全部流していく。
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