第20章 呪胎戴天
※伏黒視点
宿儺に飛ばされて、俺は住宅街に身体をぶつけた。
もう『鵺』も限界だ。
(壊される前に解いた方がいいな)
生得領域を抜けるのに式神一通り使っちまった。
しかも『玉犬』(白)と『大蛇』は破壊されてる。
(もう呪力が……)
頭がフラフラして、考えがまとまらない。
全部、夢なんじゃねぇかとすら思う。
『伏黒くん』
その顔がチラついて、息ができなくなる。
「く……っそ」
こんなの全部、夢だ。
ただの悪夢にして、全部消してしまいたい。
考えが乱れた俺の目の前に、ソイツがまた降りてくる。
でも……降りてきたのは、1人じゃない。
「……っ、綾瀬」
俺のもとに降りてきた、宿儺の腕には綾瀬が抱えられている。
「なんで……オマエ、綾瀬を抱いて、動ける」
綾瀬に触れているのなら、呪力は消えるはず。
でも、コイツは綾瀬を抱えてなお、その呪力を出力してココへ降り立ってる。
驚きを隠せない俺を見て、宿儺は笑った。
《コレはあくまで抜け殻。呪力を吸収し、無効化するのは皆実の魂が為す式だ。……ただの肉体となった今、その効果はない》
そう言って、宿儺が綾瀬の身体を俺に向かって投げた。
「……っ!」
触れた綾瀬の身体は冷たい。
胸の傷から流れていた血は固まって。
その身体はもう俺の呪力を吸収しない。
《やはりオマエ、皆実に魅せられていたか。……道理で皆実が自死した後、動きが極端に鈍くなったわけだ》
宿儺の話なんか、どうでもいい。
綾瀬の身体をこれ以上、傷つけたくなくて。
できるだけ優しく抱いて。
俺の背後に隠すように座らせた。
《無駄なことを》
俺の行動を嘲笑って、宿儺は自らの顎に手を当て、俺を見下ろす。