第20章 呪胎戴天
「虎杖は戻ってくる。その結果、自分が死んでもな。そういう奴だ」
《買い被りすぎだな。コイツは他の人間より多少頑丈で鈍いだけだ。先刻もな。今際の際で脅えに脅え、ゴチャゴチャと御託を並べていたぞ》
宿儺は自らの唇についた血を拭って、ケヒケヒッと笑っている。
《皆実に助けられ、皆実に泣きついて……無様なことよ》
余裕綽々と告げるように、宿儺はポケットに両手を突っ込んで告げた。
《断言する。奴に自死する度胸はない》
その断言はやけに自信満々で、それが俺を苛つかせた。
(アイツも、そこまでバカじゃない)
腕が治っても治癒……反転術式が使えるんだ。
宿儺は受肉してる。
心臓なしで生きられるとはいえ、ダメージはあるはずだ。
(とすれば……俺が取るべき行動は)
虎杖が戻る前に、心臓を治させる。
心臓を欠いた体では俺に勝てないと思わせるんだ。
(できるか?)
特級の前ですら、動けなかった俺に。
そう考えて、また……綾瀬の姿が視界に入った。
倒れたまま、ビクともしない。
俺が最後に見た時ですら、大丈夫なんかじゃなかったのに。
宿儺の呪力を意図的に相当量浴びたなら。
耐えられるわけがない。
壊れたって、おかしくないんだ。
『大丈夫』
大丈夫じゃなくても、綾瀬はやったんだ。
だったら俺も……。
(できるかじゃねぇ、やるんだよ!!)