第20章 呪胎戴天
《なんの縛りもなく俺を利用したツケだな。俺と代わるのに少々手こずっている様だ》
俺の思考を読み解いて、宿儺が告げる。
言葉を口にしながら、宿儺は虎杖の制服をビリビリと破り始めた。
《しかしそれも時間の問題だろ。……そこで俺に今できることを考えた》
そうして宿儺が、自分の胸を自らの手で切り裂いた。
「なっ!!」
《小僧を人質にする》
手にしてるのは虎杖の、心臓。
《俺は心臓なしでも生きていられるがな。小僧はそうもいかん。俺と代わることは死を意味する。更に駄目押しだ》
虎杖の心臓を投げ捨てて、次に宿儺が手にしたのは……腐敗した指。
(宿儺の指! 特級が取り込んでいたのか)
そう理解するのと同時、宿儺がその指を、なんの躊躇もなく呑みこんだ。
(3本目……)
体を取り返せない状況。
取り返したところで死が確定した未来。
そして、さらに宿儺の呪力を取り入れたとなれば。
虎杖の意識が戻ってくる確率は……。
《さてと、晴れて自由の身だ。……もう脅えていいぞ》
宿儺のまとう殺気が、俺に突き刺さる。
《殺す。特に理由はない。貴様の死で皆実の体内の呪いが濃くなればそれで良い》
『虎杖悠仁、オマエを――〝呪い〟として祓う』
「……あの時と立場が逆転したな」
誰かを助けるために呪われたオマエを、俺が祓おうとして。
俺たちを助けるために、また呪われたオマエが、今度は俺を殺そうとして。
(……いつだって、そうだ)
不平等な現実のみが平等に与えられている。