第20章 呪胎戴天
※伏黒視点
蔓延っていた呪いの気配が一気に消える。
(生得領域が閉じた!)
それは特級が死んだという証拠。
虎杖が宿儺と変わり、呪霊を祓った。
(でもあの宿儺が素直に言う通りにするか……?)
過ったのは、綾瀬の顔。
アイツなら、宿儺を従わせることも可能。
でも、不安だった。
『大丈夫』
毎度全然大丈夫じゃない顔して、そう口にする綾瀬にうんざりするけど。
その言葉に甘えることしかできない自分にはそれ以上にうんざりしてしまう。
それでも、無事にすべてが済んだなら……それでいい。
(後は虎杖が戻れば……)
そう思った瞬間。
ドサリと、音が響いた。
振り返らなくても、その香りを俺は知ってる。
《ヤツなら戻らんぞ》
隣に並んだ、特級呪物が、俺に告げる。
その真下、地面の上には綾瀬が転がっている。
悪い予感は……見事に的中した。
《そう脅えるな。皆実はまだ死んでいない。少し、調教しただけのこと》
(少し、だと……?)
地面の上に倒れてる綾瀬の身体は、痙攣してる。
何も反応を示さないところからして、気絶しているのは明白。
(綾瀬には……呪力による攻撃は効かないはずだろ)
「綾瀬に、何をした」
《俺の濃い呪力を流しただけだ。……皆実に物理的攻撃は効かぬが、濃い呪力を吸収させればさせるほど、その精神を壊すのは簡単なこと》
綾瀬に何があったかは、それ以上聞かなくてもわかった。
小学校の事件とまったく同じ。
(いや……それ以上か)
今すぐ綾瀬を安全なところに連れて行きたい。
けれど、綾瀬を渡さんと言いたげに、宿儺が綾瀬の傍らから離れない。
《さて……皆実という極上な血肉を控えて、俺も今は機嫌がいい。少し話そう》
焦る俺の気持ちを悟って。
宿儺はあえて、俺にそんなクソみたいな提案を持ちかけた。
(……虎杖)
どうして戻ってこない。
綾瀬がこんなことになっているのに、どうして……。