第20章 呪胎戴天
すべてが宿儺の呪力に覆われる。
屍が鳥居となって、すべての死を迎え入れるような。
おぞましくて、凶々しい、宿儺の世界が、現実世界と融合して展開される。
それは、醜いのに……なぜか美しくて。
この世のものではない空間が、全てを支配する。
(レベルが……違う)
先程の斬撃の比でははない。
美しく均等に、開き捌かれたその身体はもはや修復することもままならないほどに細かく千切れている。
《3枚におろしたつもりだったんだが、やはり弱いなオマエ》
何事もないように、宿儺はつまらなそうに呟く。
遊びは終わりだと告げるように、小さく息を吐いた。
そうしてそのまま、呪霊に歩み寄り、その胸の中心にある黒い穴に、指を2本埋めて。
ズルンと〝ソレ〟を取り出した。
(やっぱり……あったんだ)
宿儺が手にしているのは、自身の切り分けた指の一つ。
ここに来た時から感じていた、その呪力の気配を宿儺が奪う。
《これは貰っていくぞ》
そう告げると同時、千切れた呪霊の身体が塵と化した。
本当に『少し』の時間。
ただの戯れの時間と言われても、不思議ではないほど。
圧倒的な〝呪い〟としての格の違いを目の当たりにした。
《さて》
一蹴りで、宿儺が橋の上に戻ってくる。
私の前にまたしゃがみ込んで、宿儺はケヒッと笑った。