第20章 呪胎戴天
(一撃で……こんな)
橋の下、水の張った地下で行われた、宿儺による一方的な攻撃。
私は声も出せずに、橋の上でそれを見下ろす。
捌いた四肢と胴体を壁に吊るし上げた宿儺が、つまらなそうに呪霊のことを見上げてる。
《我々は共に〝特級〟という等級に分類されるそうだ。俺と……虫がだぞ?》
宿儺は呆れるように笑う。
けれどまた、呪霊が息を吹き返す。
あれほどの斬撃を受けても尚、呪霊はまだ祓えない。
(やっぱり……あの呪霊、強い)
虎杖くんと伏黒くんが全く歯が立たなかったのも当然。
この呪霊は強い。
ただ、目の前の〝呪い〟が規格外なだけ。
宿儺は呪霊の行動を愉しげに見つめる。
ポケットに手を突っ込んで、あくまでこの状況を愉しんでる。
そんな宿儺の愉悦を満たすように、呪霊が再び壁に埋まった身体を繋ぎ合わせる。
身体の全てを修復して、呪霊がニッと歯を見せた。
《嬉しそうだな。褒めてやろうか?》
まるで子どもと遊ぶみたいに。
宿儺は呪霊に声をかける。
《だが呪力による治癒は人間と違い、呪霊にとってそう難しいことではないぞ》
静かに告げて、宿儺がポケットから両手を出した。
《オマエもこの小僧も呪いのなんたるかをまるで分かっていないな》
宿儺が姿勢を整える。
纏う空気が一気に冷たくなって。
(息が、できない……)
呼吸をしたら、その時点で殺されるような。
そんな感覚が、この空間一体に広がる。
《いい機会だ。教えてやる。本物の呪術というものを》
宿儺が指を器用に合わせ、唱えた。
《領域展開……伏魔御廚子》