第20章 呪胎戴天
宿儺の背後――呪霊がまた強力な呪力を爆散して、宿儺へ向ける。
宿儺は私のことを手離して。
向かってくる高出力の呪力に、自らの切断された腕をかざす。
爆撃が宿儺にぶつかる寸前、その腕を瞬間的に治し、自らの眼前で散らせた。
《あ、こっちも治してしまった》
咄嗟に治してしまった左手を、宿儺が憎らしげに見てる。
腰が抜けて、私はその場にぺたりと座り込んでしまった。
そんな私を見て、また宿儺が笑った。
《少し待っていろ、皆実》
宿儺はそう告げて、こちらをマヌケ面で見てる呪霊に視線を向けた。
宿儺の顔は不気味なまでに笑顔。
《そうかそうか。俺と皆実の交わりを邪魔するほどに散歩は嫌か。まぁ元来呪霊は生まれた場に留まるモノだしな。良い良い》
告げ終わると同時、その笑顔が一変――殺気に変わる。
《ここで死ね》
動きが早すぎて、何が起きたのか分からなかった。
気づけば、呪霊が薙ぎ倒されて、床に叩きつけられていた。
《@&¥¥;:&$£€%#》
呪霊がもがくように声をあげるけど、私にはその言葉を理解できない。
倒れた呪霊の直上に立って、宿儺がニタリと笑う。
《ほら、頑張れ頑張れ》
その掛け声とともに、容赦なく呪霊を踏み潰す。
たった一度、踏み潰しただけで橋ごと破壊した。
橋を破壊するほどの威力が加わったのに、呪霊はまだピンピンしてる。
落ちる拍子に、呪霊が宿儺の脚を掴んだ。
《おっ》
共に落ちていく中でも、宿儺はあくまでその余裕な態度を崩すことなく。
自分を薙ぎ払おうとする呪霊の腕を捌いた。
《呪霊といえど、腕は惜しいか?》
呪霊の腕を掲げ、瓦礫の上に鎮座して。
宿儺はケヒッケヒッと独特の笑い声をこぼす。
そして……。
《解》
右手の指を2本、呪霊に向けて振り立てて、唱える。
その言葉に結われた術式が、見えない斬撃となって呪霊にぶつかって。
ゾッとするほど美しく呪霊の四肢が捌かれた。